ばあちゃんの名前はカタカナで「シモ」と書きます。
生まれた日の朝、雪がチラチラ降っていて辺り一面に霜が降りていたことから名付けられたそうです。
「何でユキじゃなかったの?」と問うと、「ユキさんは私のお母さんの名前やけん」とばあちゃんが答えて一緒に笑うのが定番のやりとりです。
ユキさんがよく作ってくれた葉唐辛子みそが美味しかったという話から、ばあちゃんの記憶をもとに再現した唯一味の葉唐辛子みそ。
西京焼のように鰆に塗って焼くのが私のお正月の定番になりました。
ばあちゃんはもうこの葉唐辛子みそを一緒に作った思い出を失ってしまったけど、食べるたびに「おいしかね」と言う。
ユキさんの味だという舌の記憶も何処かに置いてきてしまったみたいで、そんなエピソードを「へぇ。」と他人事のように聞く。
でも、たしかにこの台所で2人して懐かしい味を求め作ったあの日がある。
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