唯一味の歴史を遡ること80年余り
古い古いエピソード。
吉松親父(きちまつおやじ)こと、私の曽祖父のお話。
働き者の吉松親父、
片道2時間かかる土地を買い耕していた。
朝4時から家族と牛を連れて畑へ向かい
陽が落ちるまで皆んなで畑仕事をする日々。
幼かった祖母も眠い目を擦りながら毎朝
牛のお尻について行き
草むしりや野菜摘み、
田植えや稲刈りに駆り出されていたそう。
その畑の隅には唐辛子も植わっていたそうで
それが後の唯一味となる。
ある日のこと、
日没を過ぎてもまだ黙々と作業をする
吉松親父一家。
祖母の姉の鶴さんがため息をつきながら一句
“陽は星座に没せんとす
吉松親父はまだ上がらんと云ふ”
「姉さんがそやん言うけんがお母さんと笑った笑った」
と昨日のことのように話す祖母。
私はこの話を聞くのが本当に好きだ。
働き者の吉松親父の血は祖母へと継がれたのは確か。