辛いもの好きだった“キチマツオヤジ”こと
私のひいお爺さん。
キチマツオヤジが大事に毎年育てていたのが
この唯一味。
私は一度も会ったことがないのだけど、
ばあちゃんを経由して種を受け継ぎ
毎日キチマツオヤジが食べていた
この唯一味を私も食べている。
唯一味を始めるようになってから
キチマツオヤジがどんな人だったか
ばあちゃんによく尋ねては
色んな話しを聞きだした。
集落に6軒しか家がないような
秘境にキチマツオヤジ一家は住んでいて
キチマツオヤジが亡くなった時、
そのうちの何人かが
「この人のお陰で自分は人生を救われた。
返せないかもしれないお金をドンと
貸してくれたからやり直せた」
と墓前で手を合わせたと言う。
誰よりも働き者だった人で
贅沢なことは一切せず
家族や人の為に生きた人生。
格好良すぎて、ばあちゃんに
「大袈裟じゃなくて、本当にそんな人だったの?」
と確かめた事もしばしば。
叶うなら会ってみたい。
いつもそう思いながら
ばあちゃんにキチマツオヤジの昔話をせがむ。