唯一味の一年

土作り

前年の畑仕舞いの後
土の成分を分析して何が足りないか何が余分かを知る。
分析をもとに余分な成分を吸ってくれる植物を育てたり。
そうして土をまっさらに。
今年はどんな季節が巡るのだろうと想像する。
栄養と水捌けの均衡を考え必要なものを漉き込んで馴染ませて。

種まき

新月の日。そして一粒万倍日に種を蒔く。
一粒一粒に命が宿っている。
点のような種に根が生え線になり
葉が茂り花が咲き木になる。
壮大なストーリーは、土に種を植えることから始まる。
土に蒔かないと眠ったままという不思議。神秘的な気持ちで命を呼び起こす。

定植

唐辛子は苗づくりが肝心だと言われます。
「よか苗が出来ちょるね」とばあちゃんから初めて褒められた年は
溢れんばかりの豊作でした。
畑へと定植するときに、”よか苗”かどうかが分かります。
土から上の部分も立派であることは当然のこと、肝心は土から下。
ポットいっぱいにしっかりとした根が回っているか。
大切に育てた苗を一株一株丁寧に手植えしていきます。

一番果実摘果

一番花が咲いた数日後、ぷっくりしてくる一番果実。
一つの木から一つずつ摘んでいくことで、木の成長がグンと加速する。
摘んだ一番果実で自家製グリーンタバスコを仕込むのが楽しみの一つ。

手入れ作業

愛して手入れすればするほど、美味しくなって応えてくれる。
だけど甘やかしすぎない。それも大切。
台風や豪雨を耐え抜いたあとの傷跡を手入れするときは、
「よく頑張ったね」と声を掛けながら。
毎年のようにある自然の猛威と向き合い、共に戦う気持ちで。

収穫

収穫を迎えるまでには、本当に沢山の困難があります。
虫たちとのやりとり。(なるべく平和に共存したい、だから考え行動する)
豪雨、干ばつ、台風などの自然災害、そして病害、獣害。
困難を乗り越えた唐辛子たちは、驚くほどに味わい深くなる。
人と同じだなって、いつも思います。
太陽に照らされた真っ赤な唐辛子は、神々しいほどに艶々としていて
手を止め見惚れてしまうことがある。

乾燥

唯一味の唐辛子は、ぷっくり太った形が特徴。
摘み取った実を一度天日に干すことでビタミンDの生成を促す。
そして乾燥機で一気に乾かすと、カビなどの心配もない。
肉厚なのであまりシワが無い綺麗な乾燥唐辛子に仕上がります。

加工

手作業で丁寧にヘタを取り、挽いていく。
挽き方を変えると辛さの感じ方、風味の広がり方が変わる。
それぞれの調合に合わせ挽き方を変える。
商品作りには決して妥協しない。
素材、味、安心を強く意識し感動してもらえるような商品作りを常に目指す。

畑仕舞い

一年の農業が終わると、畑仕舞いをする。
木を土から引き抜き、防草シート、マルチを剥がしてまっさらな畑へ。
種蒔きから振り返るとまるで人の人生のように感じてしまう。
終わりを迎えた木に「ありがとう、お疲れ様」の気持ちが込み上げる。
そして、また来年へと繋げられることに感謝を。

土作りからはじまり
種をまき、芽が出て花が咲き
実がなると摘み取り
冬が近づくと木が枯れ、
畑を仕舞う。

それぞれの時間に、
台風、豪雨、猛暑、虫害、病害など
困難が訪れては乗り越えてきました。
同時に、成長の喜び、
実りの有り難さ
可愛い葉や花や
実の愛おしさを感じながら。

木が枯れ1年の農業が終わり
振り返る時期。
いつもそれは
人の人生の様だと
感じます。