ちょっとばあちゃんのお話を。
私は、ばあちゃんから唐辛子の種を受け継いだ。
畑仕事の何もかもをばあちゃんから教わった。
だから、作業の工程の呼び方とか道具の名前とかが昔ながらの呼び名なのか方言なのかはたまたどちらもなのか分からないが、農家の友達に「?」という顔をされ、肝心な話が伝わらなかったりすることがある。
ばあちゃんの教えはものすごく効率的で理にかなっていて、経験から生まれたものなんだろうなといつも目からウロコがポロポロと落ちたのだった。
ばあちゃんは真面目を絵に描いた様な人だ。
何故ならば、ばあちゃんは辛いものが苦手だ。なのに何十年も一人暮らしだったのに毎年唐辛子の種を蒔き毎年収穫して、その翌年も翌年も続けてきた。
「どうして唐辛子食べないのに育ててたの?」と聞いたことがある。
「だってお父さんから貰って種がずっとあるけん。毎年種蒔きの時期が来るもんやけんしょんなかさ。漬物に1本入れるのに使うとったよ」と。
漬物のたった1本の為に毎年育てていたなんて。
そのおかげで唯一味はあるのかと思うと奇跡だ。
そんなばあちゃんもこの12月で91歳。
今では何でも億劫な人に。
「なんもせんで座ってるのがいっとう好いちょる」が口癖。
いつまでも一緒に居たいし、いつまでも元気でいてほしいと願うばかり。